■一歩先行くハーレーカスタム【第15回】キャブレター編
テニスの錦織選手の活躍の影響で、いわゆる「錦織モデル」のラケットやシューズ、ポロシャツが飛ぶように売れているようですね。これは「形から入る・見た目から入る」人が多いことの現れなのかもしれませんが、別に形から入ることは悪いことじゃないですよね。
ハーレー乗りのみなさんも、形から入った人がほとんどではないでしょうか。
「あんなハーレーに乗りたい!」
「あのハンドルに交換したい!」
最初はみな、見た目のところで理想を追求していくものです。
とはいえ、徐々にルックスがグレードアップしていき、自分の愛車がサマになってくると、今度は「中身(機能)」に関心が向かうようになります。
「乗り心地を改善したい!」
「フィーリングにこだわりたい!」
こんなことを考えるようになったら、中級者の仲間入りですね。

さて、ハーレーの乗り味を高めていこうと思ったとき、最初に注目するポイントが吸気系であり、具体的には「キャブレター」だと思います。今回は、ハーレーのキャブレター交換について解説していきましょう!
そもそも、キャブレターって何?
キャブレターが、エンジンのパフォーマンスや乗り味に影響を及ぼすパーツであることは、みなさん何となく理解していると思いますが、念のためキャブレターの機能・役割から。キャブレターは、エンジンに送り込む混合気の量や濃さ(空気とガソリンの比率)をコントロールする装置です。
何のためにキャブレターを変えるのか?
キャブレターを変えることで、ハーレーの始動・発進・加速、またスロットルレスポンスや燃費などが変わってきます。キャブレター交換によってエンジンが変わり、走りが変わる――それほど重要なパーツがキャブレターなのです。「純正ではパンチが足りない」という人もいれば、「もっと乗り味を向上させたい」と、より理想に近い走りを求めてキャブレターを交換する人も少なくありません。
ハーレーのキャブレター、基本はこの3つ!
「どのキャブレターに変えると乗り味がどう変わるのか?」は、ぜひ押さえておきたいポイントです。理想とするフィーリングを実現するため、代表的なキャブの特性は覚えておきましょう。ハーレーのキャブレターは、その構造(混合気の供給方法)の違いから大きく3つに分けることができます。S&Sキャブなどの「固定ベンチュリー型」、純正CVキャブやSUキャブなどの「負圧可変ベンチュリー型」、HSRキャブなどの「強制可変ベンチュリー型」の3種類が代表的です。
◎01 固定ベンチュリー型キャブ
スロットルと連動したバタフライバルブによって混合気をコントロールする、シンプルな構造のキャブレターです。
【S&Sキャブ】

【装着イメージ】

何と言っても、口径の大きさからくる爆発的なパワーが特徴。音は太く、鼓動感もピカイチで、アメ車的な「ドカン」とくる荒々しい乗り味が魅力です。注意点を挙げるとすれば、エンジンを選ぶということ。これだけ大口径のキャブレターになると、口径に見合った吸入ができるエンジンでないと能力が最大限に発揮されません。
◎02 負圧可変ベンチュリー型キャブ
固定ベンチュリー型キャブの発展型。吸気負圧を利用してベンチュリーの径を変化させるのが特徴のキャブレターです。
【SUキャブ】

【装着イメージ】

図太いサウンドが特徴で、ハーレー独特の「ドコドコ感」をより一層感じられるキャブレター。マイルドなレスポンスで始動性にも優れています。加速はイマイチかもしれませんが、速さを求めるのではなく、ゆっくりドコドコ走りたい人には向いているキャブだと言えるでしょう。
◎03 強制可変ベンチュリー型キャブ
スロットルと連動して上下するスライド式のバルブによりベンチュリーの径を任意に可変させられるキャブレター。空気とガソリンの両方をダイレクトにコントロールできるのが特徴です。
【HSRキャブ】

【装着イメージ】

パワフルな加速が魅力のキャブレター。操作性・パワー・燃費のどれをとっても平均以上の高性能が期待できます。レスポンスも良く、排気音も太くなりますが、鼓動感には欠けるため、荒々しさを求める人には不向きかもしれません。
キャブレター交換事例
最近、ネオガレージで手がけたキャブレターの交換事例をご紹介します。

2005年式FXDLダイナローライダーの
キャブレター交換です。

現在は純正のCVキャブレター。
これをSUキャブに交換します。

全部取り外すと・・・エンジンの吸気口が現れます。

今回使用するキャブレターはこれ!

キャブの取り付け完了。
SUキャブ特有のドームとピストンが美しく、
存在感が際立っています。

SUのエアクリーナーを付けて完成。
スタイリッシュな見た目とともに、
ハーレーらしいドコドコ感が備わりました!
「自分で交換する!」という方へ
キャブレターはポン付けできることはほとんどなく、マフラーなど他のパーツとも連動するため、必ず車両に合わせた調整が必要になります。特殊な工具は使わないためDIYでも交換できますが、成功するかどうかは別の話。自分で交換したのは良いけど、「イメージしていたフィーリングと違う」「本調子が出ない」など、トラブルが多いのも事実です。せっかくキャブレターを交換するなら、求める乗り心地を実現できなければ意味がないので、初めての方はショップに相談するのがベターです。
キャブvsインジェクション どっちを選ぶ!?

ハーレーは、2007年モデルから全車EFI(インジェクション:電子制御燃料噴射装置)が採用されているのはご存じのとおりです。それぞれにメリット・デメリットがありますが、キャブレター派・インジェクション派に分かれて議論が展開されており、当店でも「キャブとインジェクションってどっちがいいの?」という質問をいただくことがあります。
正直なところ、個人の好みの問題でもあり、人によって様々な見方があるので「どっちがいい」と一概に言うことはできません。インジェクションのほうが新しい技術であり、突き詰めたセッティングができればキャブよりも高性能な機構となります。とはいえ、インジェクション仕様の車両をキャブに交換する人がいるのも事実。キャブにはキャブのアナログな魅力があるのです。
強いて言うなら、ハーレーをいじって乗り味の違いを楽しみたい方や、走行をする環境があまり変わらない方はキャブレターが向いていると思います。逆に、速さや利便性を追求したい方や、走る場所・環境が大きく変わる方にはインジェクションが向いていると思います。
結局は、あなたがバイクに何を求めるか?――これに尽きます。現状の乗り方や、これからのハーレーとの付き合い方を踏まえて、じっくり考えてみてくださいね。
ちなみに、キャブ車両でもインジェクション車両でも個性を出せるポイントが「エアクリーナー」です。エアクリーナーについて知りたい方は、以下のコラムも参考にしてください。